大原 利眞、増井 利彦、高見昭憲、杉本 伸夫、今村隆史
国立環境研究所
竹村俊彦
九州大学
1.成果目標
・排出インベントリ(EI)、逆推計モデル(IM)、アジア太平洋統合モデル(AIM)、化学輸送モデル(CTM)、全球気候モデル(GCM)を統合的に用い、気候・環境影響の緩和に対して有効なSLCP(エアロゾル、オゾン)とLLGHG(CO2)の削減の最適パスを能動的アプローチによって探索し、提案する。
上記の排出パスを含めた情報を集約化し、大規模なシミュレーションを実行しなくても政策立案者が簡便に使用できるようなツールキットの作成を行う。
・上記の排出パスを含めた情報を集約化し、大規模なシミュレーションを実行しなくても政策立案者が簡便に使用できるようなツールキットの作成を行う。
2.研究概要
大気汚染はアジア、アフリカなど各国とも深刻な問題となっており、将来的な大気質の改善は必然である。SLCPにはオゾン、エアロゾル(粒子状物質PM)が含まれており、その削減はLLGHGと比較して容易であると考えられており、2012年に始動したCCAC (Climate and Clean Air Coalition)などでもSLCPの削減が急務であると考えられている。しかし、SLCPを削減した場合に起こると考えられる複雑な気候変動はわかっていない。
本課題では、地球温暖化と大気汚染による環境影響の緩和に対して有効なSLCP削減の最適パス、それを実現する効果的な対策メニューを提案することを目標とする。過去の大気質変化イベントの定量的解析を通じて、SLCP削減の有効な対策を明らかにし、対策効果の定量的評価ツールを開発する。同時に、SLCPおよびLLGHGの両方を考慮した将来シナリオを作成し、SLCP削減がもたらす全球的な気候変動、アジアにおける大気汚染の低減、及びそれらの自然・社会影響を明らかにする。それらの結果をもとに、地球温暖化の緩和と地域大気汚染の改善に対するSLCP削減の最適パスを提案する。
その手段としてこれまでの戦略課題やそのほかの先行研究で構築されてきた排出インベントリ(EI)、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)、化学輸送モデル(CTM)、逆推計モデル(IM)、全球気候モデル(GCM)等の評価・解析ツールを最大限活用するとともに、最終的にこれらのツ−ルを統合した「統合影響評価システム」を構築する。それによって、政策立案者とステークホルダーが参加して対策コストと影響を評価しながら能動的に最適パスを探査する手段を実現する。本プロジェクトではSLCPのうちエアロゾルとオゾンを主な対象とするが、排出/吸収源の評価自体が大規模な研究を必要とするメタンについては、他のプロジェクトにおける研究成果を最大限に利用する。