東京大学気候システム研究センター(現・東京大学大気海洋研究所)、名古屋大学地球水循環研究センター、東北大学大気海洋変動観測研究センター、千葉大学環境リモートセンシング研究センターでは、文部科学省教育特別経費事業「地球気候系の診断に関わるバーチャルラボラトリーの形成」を推進してきた。 昨今、地球温暖化現象と地球規模の環境汚染が引き起こす顕著な気候変動現象が懸念されており、そのために科学技術基本計画のもとに重点的な研究が進められているが、大学における基礎研究レベルの進展なしにはこのような研究を息長く展開することは困難である。 そこで、本事業では、地球気候と環境の研究に関わる全国共同利用センター等が初めて組織的に連携することにより、変化する地球気候を総合的に診断する研究を大学レベルで取り組むことを目指している。大学間の連携メリットは研究のみならず教育面でも非常に大きいものである。
温暖化など大きなストレス下にある地球気候系の診断を行うために、気候・環境研究に関わる他の大学附置研究センターと協力してバーチャルラボラトリーを形成し、各センターの特色と研究資産を活かした研究・教育を分担・連携して行う。 すなわち、温暖化物質、エアロゾル・雲の微物理量、植生指標、雲・降水系の構造に関するデータをそれぞれのセンターが提供し、それを領域モデルや全球モデ ルによって解析するシステムを確立し、温暖化や水循環のモデリング精度を向上させるとともに、現場教育を通して当該分野の若手研究者の育成を図る。 このような連携によるシナジー効果によって、気候系の診断方法の確立をはかり、事業全体として温暖化現象の解明などの重要課題に取り組み、地球温暖化イニシアチブ・水循環イニシアチブ・地球観測統合システム(GEOSS)等の我が国の重点課題に貢献する。
気候モデル・シミュレーション結果によると、温暖化現象は20世紀後半から急速に顕在化すると予測されている。それに符丁して、近年、温暖化の予兆現象と、温暖化に一因を持つと考えられる異常気象が世界各地で頻繁に発生し始め、大きな社会被害を生んでいる。 このような特異現象の予測と対策には、気候予測精度と応用範囲が広い高度に複合的なモデルと、それをサポートするデータアーカイブシステムを、関連機関で連携し早急に開発・利用する必要がある。 第3次科学技術基本計画では、重点推進分野として「環境」、国家基幹技術として「海洋地球観測探査システム」と「次世代スーパーコンピューティング技術」があげられているが、これらの重点施策を支えるためには、基礎研究基盤の充実と次世代の育成が必要である。 また、対策の基礎となる気候変動シナリオに関する「説明責任と情報発信の強化」を行う必要がある。
本事業は、東京大学大気海洋研究所、名古屋大学地球水循環研究センター、千葉大学環境リモートセンシング研究センター、東北大学大学院理学研 究科附属大気海洋変動観測研究センターで構成される「地球気候環境研究の連携に関する大学附置研究センター協議会」が共同提案する新たな計画であり、各セ ンターは特色を生かした分担課題を立て、連携して上記の目的・目標を達成する。 東京大学大気海洋研究所は気候モデリングを担当しており、これまでこの課題に関連した多くの競争的資金を獲得してモデル群の充実や気候データの取得、基礎研究の推進を図り、GEOSSや温暖化イニシアチブ対応の各種取り組みを行ってきた。 当事業は、これまでの成果を踏まえ実施するものである。