2020年1月10日 国立大学法人東京大学大気海洋研究所 プレスリリースにて
地球表層圏変動研究センター 横山祐典教授らが発表を行い、
記事が掲載されました。



掲載内容
星砂が語るサンゴ礁の柔軟な応答力 
~世界最大のサンゴ礁では最終氷期最盛期に現在の海面上昇の2倍のスピードで海面が急激に低下してもサンゴ礁が形成された~


発表のポイント
星砂(有孔虫)の化石を分析することで、世界自然遺産のグレートバリアリーフ(大堡礁)では最終氷期最盛期(今から3~1.7万年前)に起きた2度の急激な海面の低下後に、現在の沖縄周辺でみられる礁原と浅礁湖をもつ裾礁タイプのサンゴ礁が形成されたことを明らかにしました。このことは、気候変動や地球環境変動に対してサンゴ礁が柔軟に応答できることを示す重要な成果です。

琉球大学理学部の藤田和彦教授、同大学大学院理工学研究科の元大学院生の柳岡(喜屋武)範子氏、仲田潮子氏、九州大学浅海底フロンティア研究センター・大学院比較社会文化研究院の菅 浩伸主幹教授、東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授、宮入陽介特任研究員(研究当時)、豪シドニー大学のジョディ・M・ウェブスター准教授の国際共同研究チームによる研究成果が、地質学分野のトップジャーナル「Geology」の 2020年1月号に掲載されました。


発表概要
現代は、第四紀(注1)という地質時代です。第四紀は「間氷期」とよばれる比較的温暖で海面が高い時期と、「氷期(氷河期)」とよばれる比較的寒冷で海面が低い時期が繰り返されてきました(現在は間氷期にあたります)。現在を含む間氷期に海面が上昇すると、海面に追いつくようにサンゴ礁(注2)が形成されることは多くの研究によって明らかにされてきました。一方、氷期に海面が低下すると、どのようにサンゴ礁が形成されるのかについてはよく分かっていませんでした。これは、氷期のサンゴ礁が現在の大陸棚の海底下に存在しているためです。
 藤田教授らの研究チームは、オーストラリアのグレートバリアリーフ(注3)沖の大陸棚で掘削された堆積物コア試料を用いて、堆積物中に含まれる有孔虫(星砂)(注4)という単細胞生物の化石の種組成や殻の保存度と放射性炭素年代を組み合わせることで、世界最大のサンゴ礁であるグレートバリアリーフ(大堡礁)では現在起きている海面上昇の約2倍のスピードで氷期に海面が急激に低下した後に、現在の沖縄周辺でみられる裾礁タイプの小規模なサンゴ礁が形成されたことを世界で初めて明らかにしました。これは第四紀の地球環境変動に対してサンゴ礁が柔軟に応答できることを示す重要な成果です。  


発表雑誌
雑誌名:
 「Geology」

対象論文:
 Reef-flat and back-reef development in the Great Barrier Reef caused by rapid sea-level fall during the Last Glacial Maximum (30–17 ka)

著者:
 Kazuhiko Fujita, Noriko Yagioka, Choko Nakada, Hironobu Kan,
Yosuke Miyairi, Yusuke Yokoyama, Jody M. Webster


用語解説
・注1 第四紀:
最も新しい地質時代で、258.1万年前から現在までをいう。 温暖な「間氷期」と寒冷な「氷期(氷河期)」が繰り返されることで特徴づけられる。過去数十万年間では氷期は比較的長く10万年ほど続くのに対して、間氷期は比較的短く1万年程度である。

・注2 サンゴ礁:
熱帯から亜熱帯の浅海域に分布し、主に造礁サンゴが上方に積み重なって形成された高まり状の地形。造礁サンゴの多くは褐虫藻という微細な藻類と共生しており、その藻類が光合成を行うために、光を求めて海面の方向へ成長する。造礁サンゴの上方への成長と台風などによる死んだサンゴの上に新しいサンゴの着底が繰り返されて高まりが形成されていく。海面に到達したサンゴ礁では、海面付近に潮間帯の平坦地形(礁原、または礁嶺)が形成され、その陸側に凹地状の地形(礁湖、浅礁湖、または礁池)、海側に急斜面の地形(礁斜面)が発達する。
 サンゴ礁は、陸(島)の存在や陸からの距離によって、陸を縁取るように発達する「裾礁」、陸から離れた場所にできる「堡礁」、陸(島)が存在せず、サンゴ礁が内側の礁湖をリング状に囲んだ「環礁」などに分けられる。オーストラリアのグレートバリアリーフは典型的な堡礁である。琉球列島周辺では、主に裾礁タイプのサンゴ礁が発達する。

・注3 グレートバリアリーフ:
オーストラリア北東沖に広がる世界最大の堡礁タイプのサンゴ礁。1981年に世界自然遺産に登録された。

・注4 星砂:
単細胞生物有孔虫の一種。有孔虫は殻をもつ単細胞生物で、地球科学分野では海成堆積岩類や海底堆積物コアの地質年代や古環境を知る上で重要な示準化石・示相化石である。星砂は種名をバキュロジプシナ・スファエルラータ(Baculogypsina sphaerulata)といい、星の形をした有孔虫で、西太平洋のサンゴ礁域に分布し、主に礁原付近の海藻に付着して生息する。沖縄のお土産品としても有名で、沖縄の離島には“星砂の浜”と名のつく海岸がいくつか存在する。


添付資料


参考図:生きている星砂(大きさは約1ミリ)




詳しくはこちらをご覧下さい。

関連リンク

・大気海洋研究所 プレスリリース(2020年1月10日)

・琉球大学 プレスリリース(2020年1月10日)