2021年1月13日 国立大学法人東京大学大気海洋研究所 プレスリリースにて
地球表層圏変動研究センター 横山 祐典教授らの研究グループが発表を行い、
記事が掲載されました。
図1.メタンおよび溶存無機炭素の放射性炭素同位体比(Δ14C)と炭素安定同位体比(δ13C)による2次元プロット:メタンおよび深部地下帯水層に含まれる溶存無機炭素には、放射性炭素はほとんど含まれておらず、大気由来の炭素(青色のエリア)と独立した炭素循環であることが明らかになった。
掲載内容
茂原市周辺の地下深部ではアーキアがメタン生成を続けていることが明らかに
発表概要
海洋研究開発機構 海洋利用機能部門 生物地球化学センターの高野 淑識センター長代理と信州大学 大学院総合医理工学研究科の浦井 暖史研究生は、関東天然瓦斯開発株式会社および東京大学大気海洋研究所と共同で、南関東一帯に広く分布する南関東ガス田から採取された試料を分析し、深部流体に棲息するアーキアが今もメタンを生成し続けていることを明らかにしました。また、深部流体には多様性に富んだ微生物群集が存在していることも判明しました。
近年の研究によって、海底下での地下生命圏の限界(2015年7月4日既報)や微生物が関与するメタンサイクル(2018年9月24日既報)は急速に明らかになってきました。しかし、メタンやヨウ素を産出する関東地下深部におけるアーキアの存在量やその活性など、基本的な知見はほとんど不明なままでした。
そこで本研究では、メタン生成アーキアに特有な補酵素であるF430分子を分析するなどした結果、アーキアは現在も地下深部でメタン生成をし続けていること、また地表からの炭素供給はほぼ無く、独立した環境で地下生命圏を形成していることが明らかになりました。本成果は、多様性に富んだアーキア群集に関するさらなる生態の解明や深部地下帯水層におけるメタン生成プロセスの解明につながるものと期待されます。
本研究は、海洋研究開発機構と関東天然瓦斯開発株式会社で締結している共同研究の成果の一部です。本成果は、アメリカ化学会が発行する専門学術誌「ACS Earth and Space Chemistry」に1月8日付けで掲載されました。
発表雑誌
雑誌名:
ACS Earth and Space Chemistry
対象論文:
Origin of Deep Methane Associated with a Unique Community of Microorganisms in an Organic- and Iodine-Rich Aquifer
著者:
浦井 暖史1,2、高野 淑識1、井町 寛之1、石井 俊一1、松井 洋平1,3、小河原 美幸1、田角 栄二1、宮入 陽介3、小川 奈々子1、吉村 寿紘1、稲垣 史生1、横山 祐典1,3、河野 憲二郎4、村井 大助4、Park Ho-Dong2、大河内 直彦1
所属:
1. 海洋研究開発機構、2. 信州大学、3. 東京大学 大気海洋研究所、
4. 関東天然瓦斯開発株式会社
doi: https://doi.org/10.1021/acsearthspacechem.0c00204
添付資料
詳しくはこちらをご覧下さい。
関連リンク
・大気海洋研究所 プレスリリース(2021年1月13日)
・海洋研究開発機構 プレスリリース(2021年1月13日)