2022年1月24日 国立大学法人東京大学大気海洋研究所 プレスリリースにて
地球表層圏変動研究センター長 阿部彩子教授らが発表を行い、
記事が掲載されました。



掲載内容
西暦3000年までの南極氷床の変動を予測 ~氷床の崩壊を防ぐための効果的な気候変動対策が重要~

発表のポイント
◆21世紀末の気候がその後も続いた場合の南極氷床変化を氷床モデルSICOPOLISで予測。
◆21世紀内の温暖化進行で数百年後の西南極氷床の不安定化と海面水位数m上昇の結果も。
◆西南極氷床の崩壊を防ぐために効果的な気候変動の緩和策が重要。

成果概要
北海道大学低温科学研究所のグレーベ・ラルフ教授らは、東京大学大気海洋研究所の阿部彩子教授ら、海洋研究開発機構の齋藤冬樹研究員との共同研究チームで、西暦3000年までの南極氷床の変動についてシミュレーションを行い、地球温暖化の長期的な影響について調べました。 これまで、本研究チームも参画する氷床モデル国際比較相互プロジェクト(ISMIP6)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書に研究内容を提供しましたが、その氷床変動計算は西暦2100年まででした。本研究では、西暦2100年まで既存の気候予測データを使用し、その後西暦3000年まで21世紀後期の気候が持続するという仮定のもと、「温暖化進行」経路シナリオで14の数値実験、「地球温暖化ガス排出量の削減」の経路シナリオで3つの数値実験をそれぞれ行いました。その結果、氷の損失を海面水位上昇に換算すると、温暖化進行のシナリオでは西暦3000年までのアンサンブル平均で、3.5mに上りました。また、温暖化の影響を最も受けると仮定した数値実験では5.3m上昇し、排出量削減のシナリオでは0.25mに留まることがわかりました。 本研究成果は、21世紀中に温暖化が一旦進行してしまうと、例えその温暖化進行が21世紀末で停止したとしても21世期末以降に起こる数百年の南極氷床の後退と海水準上昇に大きく影響し、その影響は長期に及ぶことを示しています。


発表雑誌
雑誌名:Journal of Glaciology

論文タイトル: Mass loss of the Antarctic ice sheet until the year 3000 under a sustained late-21stcentury climate(21 世紀後半の持続的な気候下における 3000 年までの南極氷床の質量喪失)

著者: Christopher Chambers 1,Ralf Greve1,2,小長谷貴志 3,齋藤冬樹 4,阿部彩子 3
(1北海道大学低温科学研究所,2 北海道大学北極域研究センター,3 東京大学大気海洋研究所,4 海洋研究開発機構)

doi: https://doi.org/10.1017/jog.2021.124


添付資料


西暦1990年から3000年までの南極氷床の体積減少予測(上)と2015 年と比較した氷表面の高低差(下)




詳しくはこちらをご覧下さい。

関連リンク

大気海洋研究所 プレスリリース(2022年1月24日)

北海道大学 プレスリリース(2022年1月24日)