2024年11月1日 国立大学法人東京大学大気海洋研究所 プレスリリースにて
地球表層圏変動研究センター 吉澤 晋准教授らが発表を行い、記事が掲載されました。
図1.本研究で探索したシアノバクテリア由来のロドプシンと、すでに機能が報告されているロドプシンの分子系統樹。
緑色線はシアノバクテリア由来、黒色線は他の微生物由来のロドプシン配列を表しています。赤くハイライトしたグループが、本研究で発見した「シアノロドプシン-II」です。
掲載内容
最古の光合成生物「シアノバクテリア」の新しい光利用システムを発見 ―ロドプシンによる環境適応の軌跡が明らかに―
発表のポイント
◆マングローブなどの様々な環境に生息するシアノバクテリアの大規模なゲノムデータから、光合成とは異なる光利用システム「微生物型ロドプシン」の新たなグループを発見し、「シアノロドプシン-II(CyR-II)」と命名した。
◆CyR-IIは、緑色光型と黄色光型の2つのタイプに分かれ、緑色光型はマングローブ・海洋微生物マット、黄色光型は堆積物・土壌と、異なる生息環境に由来する。このことから、利用波長の異なるCyR-IIの獲得によって、シアノバクテリアはそれぞれの光環境に適応してきたと考えられる。
◆詳細なゲノム解析から、シアノバクテリアはCyR-II以外にも様々なロドプシンを遺伝子水平伝播(注1) により獲得し、進化してきたことがわかった。本研究は、進化の過程で獲得したロドプシンが、シアノバクテリアに新しい光利用戦略をもたらしてきたことを示した。
発表雑誌
雑誌名:Environmental Microbiology Reports
論文タイトル:
Cyanorhodopsin-II represents a Yellow-Absorbing Proton-Pumping Rhodopsin clade within Cyanobacteria.
著者:
Masumi Hasegawa-Takano, Toshiaki Hosaka, Keiichi Kojima, Yosuke Nishimura, Marie Kurihara, Yu Nakajima, Yoshiko Ishizuka-Katsura, Tomomi Kimura-Someya, Mikako Shirouzu, Yuki Sudo, Susumu Yoshizawa
doi: https://doi.org/10.1093/ismejo/wrae175
用語解説
・注1 遺伝子水平伝播:
個体間や他生物間において、子孫でないのにその遺伝子を取り込む現象。細菌など、単細胞の生物ではよく見られる。
添付資料
関連リンク
・大気海洋研究所 プレスリリース(2024年11月1日)