2021年2月22日 国立大学法人東京大学大気海洋研究所 お知らせにて
地球表層圏変動研究センター 佐藤 正樹教授が課題責任者を務める、
「富岳」成果創出加速プログラム
「防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測」に関する
記事が掲載されました。



掲載内容 1.
『2020年7月に発生した熊本県球磨川の氾濫を引き起こした線状降水帯の半日先予測に成功』

「令和2年7月豪雨」と名称が定められた約1ヶ月に及ぶ一連の豪雨は、土砂崩れ・河川氾濫などで死者84名となる激甚災害をもたらしました。なかでも被害の大きい2020年7月4日5時すぎに発生した熊本県球磨川の氾濫を引き起こした線状降水帯を対象に、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、発生12時間前からの予測を試みました。その結果、強い雨に対する予測が高精度であったこと、また氾濫発生前12時間の積算降水量に対する予測確率が高いことが示されました。これらの結果は、高い信頼度を伴って12時間先まで続く強雨を予測できることを意味しており、効果的な避難行動に結びつくことが期待されます。

発表雑誌名:「SOLA」
対象論文: Forecasts of the July 2020 Kyushu heavy rain using a 1000-member ensemble Kalman filter
著者: Le Duc 1,2, Takuya Kawabata 2, Kazuo Saito 1,2,3, Tsutao Oizumi 1,2
  1:気象業務支援センター、2:気象庁気象研究所、3:東京大学大気海洋研究所


掲載内容 2.
『豪雨の予測に必要な数値モデルの解像度はどれぐらい?~「京」コンピュータを用いた線状降水帯の予測の実現に向けて~』

2014年8月に広島市で土石流を発生させた豪雨事例を対象にスーパーコンピュータ「京」を用いて再現実験を行いました。その結果、数値気象予測モデルの水平解像度を500m以下にすることで現実的な積乱雲群が構成する線状降水帯(注1)の再現に成功しました。このように実際に発生した線状降水帯を対象にして、現実的な積乱雲と線状降水帯の再現がどのような解像度で可能となるかについて調べた大規模な実験は世界で初めてです。本研究は今後、スーパーコンピュータ「富岳」を用いてさらなる進展が計画されており、線状降水帯による豪雨が多い日本の気象予報の精度向上への貢献が期待されます。

発表雑誌名:「Journal of the Meteorological Society of Japan」
対象論文: Ultra-high Resolution Numerical Weather Prediction with a Large Domain Using the K Computer. Part 2: the case of the Hiroshima Heavy Rainfall Event on August 2014 and Dependency of Simulated Convective Cells on Model Resolutions
著者: Tsutao OIZUMI, Kazuo SAITO, Le DUC, Junshi ITO




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関連リンク

大気海洋研究所 お知らせ(2021年2月22日)

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