ギャラリー
大アンサンブルによる線状降水帯と洪水確率予測
令和2年7月4日に熊本県球磨川で大規模な線状降水帯による洪水が発生し、甚大な災害をもたらしました。この事例に対して、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて1000通りものシミュレーションを実行して、線状降水帯と引き続く洪水の発生確率を求め、それぞれ80%以上、60%以上という高い確率で発生を予測することが出来ました。 これは発生の半日前からの予測で、従来の常識を破るものです。
超高解像度シミュレーションによる晴天乱気流遭遇のデジタルツイン~スーパーコンピューター「富岳」による解析映像~
乱気流は飛行機の大きな揺れや事故の原因となる大気の乱流現象です。 この動画は、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、関東上空の乱気流を超高解像気象シミュレーションにより再現し、さらにフライトシミュレータを用いて飛行機の揺れを可視化したデジタルツインです。 メソ気象から飛行機スケールに至る乱気流の物理現象を高解像計算で理解することで、事故の低減に資する乱気流の予測手法の検証・提案が可能になると期待されます。
1000アンサンブルによる確率予測 半日先の洪水予測に成功
令和2年7月豪雨において、大規模な線状降水帯によって熊本県球磨川が氾濫しました。雲解像シミュレーション(解像度2km)を1000パターン、実行して、大雨となる確率が80%以上であることを示しました。さらに水文モデルと結合することで洪水そのものを予測することに成功しました。半日前から洪水が発生する確率が60%であることが予測できるという世界に例を見ない成果です。
関連論文
- Le Duc, T. Kawabata, K. Saito, T. Oizumi, 2021; Forecasts of the July 2020 Kyushu Heavy Rain Using a 1000-Member Ensemble Kalman Filter, SOLA, 17, 41-47, https://doi.org/10.2151/sola.2021-007
30秒毎に更新する超高頻度の数値天気予報
フェーズドアレイ気象レーダの観測ビッグデータと数値天気予報モデルSCALE-RMを用いたデータ同化システムSCALE-LETKFによって、世界随一の30秒毎に更新する超高頻度の数値天気予報を実現しました。富岳を使って、2021年夏のオリンピック・パラリンピック期間に東京付近でのリアルタイム降水予報の実証実験を行い、web上で公開しました。
関連論文
- Amemiya, A., T. Honda and T. Miyoshi, 2020: Improving the Observation Operator for the Phased Array Weather Radar in the SCALE-LETKF system, SOLA, 16, 6-11. doi:10.2151/sola.2020-002
- Maejima, Y., M. Kunii and T. Miyoshi, 2017: 30-second-Update 100-m-Mesh Data Assimilation Experiments: A Sudden Local Rain Case in Kobe on 11 September 2014, SOLA, 13, 174-180. doi:10.2151/sola.2017-032
- Lien, G.-Y., T. Miyoshi, S. Nishizawa, R. Yoshida, H. Yashiro, S. A. Adachi, T. Yamaura, and H. Tomita, 2017: The near-real-time SCALE-LETKF system: A case of the September 2015 Kanto-Tohoku heavy rainfall. SOLA, 13, 1–6. doi:10.2151/sola.2017-001
- Miyoshi, T., G.-Y. Lien, S. Satoh, T. Ushio, K. Bessho, H. Tomita, S. Nishizawa, R. Yoshida, S.A. Adachi, J. Liao, B. Gerofi, Y. Ishikawa, M. Kunii, J. J. Ruiz, Y. Maejima, S. Otsuka, M. Otsuka, K. Okamoto, and H. Seko, 2016: "Big Data Assimilation" Toward Post-Petascale Severe Weather Prediction: An Overview and Progress. Proceedings of the IEEE, vol. 104, no. 11, pp. 2155-2179. doi: 10.1109/JPROC.2016.2602560
- Miyoshi, T., M. Kunii, J. J. Ruiz, G.-Y. Lien, S. Satoh, T. Ushio, K. Bessho, H. Seko, H. Tomita, and Y. Ishikawa, 2016: "Big Data Assimilation" Revolutionizing Severe Weather Prediction. Bull. Amer. Meteor. Soc., 97, 1347–1354. doi: 10.1175/BAMS-D-15-00144.1
全球雲解像モデルNICAMによる3.5kmメッシュ実験
スーパーコンピュータ「富岳」を利用した史上最大規模の気象計算を実現
将来の気象予報・気候変動予測の精度向上に繋げるために、今よりも更に大規模な気象予報システムが実現可能であるかを実証するため、我々は水平3.5kmメッシュかつ1024個のアンサンブルという、過去に例を見ないほど大規模な全球気象シミュレーションとデータ同化の複合計算を行いました。本研究が行った計算の規模は、世界の気象機関が日々行っている気象予測のためのアンサンブルデータ同化計算と比較して、およそ500倍の大きさのものであり、「富岳」と気象シミュレーションモデル、そして気象データ同化システムが互いに協調しながら開発を進めてきたことによって成し遂げられた成果です。
関連論文
- H. Yashiro, K. Terasaki, Y. Kawai, S. Kudo, T. Miyoshi, T. Imamura, K. Minami, H. Inoue, T. Nishiki, T. Saji, M. Satoh, and H. Tomita, "A 1024-Member Ensemble Data Assimilation with 3.5-Km Mesh Global Weather Simulations," in SC20: International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis (SC), Atlanta, GA, US, 2020 pp. 1-10. doi: 10.1109/SC41405.2020.00005