2022年度シンポジウム
富岳で見える気象の未来予想図

【シンポジウム無事に終了いたしました】

 2022年度シンポジウム「富岳で見える気象の未来予想図」を9月10日に開催いたしました。約150名程の方に参加頂き、誠にありがとうございました。
 本シンポジウムは、過去2年間と同じくオンライン開催といたしました。一般の方々には土曜日の自宅からでも講演を聴講することができ、参加しやすかったのではないかと思います。
 今回は、近年激甚化している極端気象として、台風や線状降水帯および大気環境に関わるエアロゾルの未来の気象予測について、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた最新の成果を紹介するとともに、今夏・今秋の気象・気候の現況・見通しについても最新の情報をご紹介いたしました。今夏は線状降水帯等に伴う大雨による被害が各地で発生しており、またシンポジウム当日は台風第12号が日本の南洋上で発達しつつある状況でした。夏から秋にかけて、日本列島は極端気象災害に気が抜けない日々が続きます。我々の研究が、極端気象による災害の低減に向けて、未来の気象予測において利活用されていくことが期待されます。今後も「富岳」を活用した気象・気候研究にぜひ関心をもって頂きたいと希望いたします。
 シンポジウムの講演資料を本ホームページにて公開いたします。下記「プログラム」欄、【講演資料】よりご覧いただけます。

東京大学大気海洋研究所 佐藤正樹
2022年9月13日


リーフレット
開催日時
2022年9月10日(土) 13:30~16:30
開催方法
「Zoom」を用いたオンライン配信で開催いたします。
参加費
無料
参加方法
下記申込みフォームより事前に申込が必要です。
※接続用URLはお申込み時とシンポジウム前日にお送りします。
申込みフォーム
申込締切
2022年9月9日(金)(先着順:定員になり次第、締め切ります。)
主催
東京大学大気海洋研究所
後援
一般財団法人 高度情報科学技術研究機構
お問合せ
東京大学大気海洋研究所 富岳気象課題事務局
電子メール:fugakuatmos@gmail.com

開催趣旨

 例年、梅雨期以降の6月から10月の出水期には、線状降水帯や台風の襲来により、大きな災害が引き起こされています。地球温暖化の進行に伴い、大雨や台風等の極端気象現象は増々激甚化することが予想されており、今後も突然の大雨や強大な台風の襲来に対する備えの意識を十分に高める必要があります。
 我々は、大雨や台風等のより早期の予測をめざして、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した研究に取り組んでいます。本課題では、激甚化する極端気象現象からの防災・減災を実現するために、「富岳」を用いて大規模アンサンブルの高解像度気象予測実験を実施し、未来の天気予報技術の確立を目指します。本シンポジウムでは、「富岳」を用いた極端気象予測の研究の最先端を紹介いたします。

プログラム

寺崎 康児

【司会】寺崎 康児(気象庁気象研究所 研究官)


13:30-13:35
ご挨拶
河原 卓 (文部科学省研究振興局参事官(情報担当)付 計算科学技術推進室長)

13:35-13:45
佐藤正樹「「富岳」成果創出加速プログラム「防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測」課題の研究紹介」
佐藤 正樹【課題代表】(東京大学大気海洋研究所 教授)
今年度は、「富岳」成果創出加速プログラムの本研究課題研究の最終年度になります。本課題では、線状降水帯の早期予測や台風等の予測精度の向上のために、「富岳」による高解像度の大アンサンブルシミュレーションを行ってきました。本講演では、本課題のこれまでの取り組みと、今後の気象・大気環境予測の課題について紹介いたします。
【講演資料】佐藤 正樹 

13:45-14:00
川畑拓矢~テーマ1~「「富岳」を用いた線状降水帯予測」
川畑 拓矢【テーマ1代表】(気象庁気象研究所/気象業務支援センター 室長)
線状降水帯を精度良く予測するためには、高い解像度でシミュレーションを行う必要があり、大きなスーパーコンピュータが必要です。しかしどんなに解像度を上げてもさらにその予測には必ず誤差が伴っています。線状降水帯が予測されて人々が避難行動をとるとき、誤差が小さいときには確実な行動となることが期待されます。このために誤差の小さな予測を目指すとともに、誤差の大きさを知ることが重要です。我々は高解像度の大アンサンブルシミュレーションを行って、精度の高い予測とともに誤差の定量化を行いました。本講演ではこのような線状降水帯に関するいくつかの事例について紹介します。
【講演資料】川畑 拓矢 

14:00-14:20
呉品穎~テーマ1~「大規模アンサンブルを用いた強風発生の確率予測」
呉 品穎(気象業務支援センター研究推進部第二研究推進室 研究員)
台風のような災害をもたらす顕著現象に対して、精度の高い予測情報を提供するのは重要です。一方、その予測には不確実性が存在し、これを定量的に評価するために、確率予測は重要な役割を果たします。我々は「富岳」を用い、令和元年東日本台風を対象に、高解像度の大規模アンサンブル予測実験を行いました。そして計算された1000通りのアンサンブルシミュレーションを用いて、関東エリアの強風発生確率を算出しました。この発表では、台風の高解像度アンサンブルシミュレーションの計算結果と強風確率予測について紹介します。
【講演資料】呉 品穎 

14:20-14:35
中野満寿男~テーマ2~「今夏の気象気候の概況」
中野 満寿男(海洋研究開発機構地球環境部門 研究員)
今夏はラニーニャが継続し、全国的に異例の早さの梅雨明けになるなどの特徴が見られました。この夏の気象気候を振り返り、台風シーズン後半を展望したいと思います。

14:35-14:55
宮川知己~テーマ2~「「富岳」を用いた極端気象の早期予測」
宮川 知己【テーマ2代表】(東京大学大気海洋研究所 准教授)
全球モデルを用いると遠方からの日本域への影響や大規模なゆっくりとした変動がシミュレーションで表現されるようになり、数週間〜季節といった長期の予測計算が意味を持つようになります。とはいえ、台風などのより小さな現象の振る舞いは確率的な要素が大きくなるため、長期の計算において単体では信頼がおけません。しかし、「富岳」を用いて初期状態の少しずつ異なる多数の計算を行うことにより、リスクの変動として捉えることが出来るようになります。本講演では、台風などの極端気象の「リスクの高まり」を早期に捉える取り組みを紹介します。
【講演資料】宮川 知己 

14:55-15:00
質疑応答

15:00-15:10
休憩

15:10-15:45
五藤大輔~テーマ3~「大気環境に関わるエアロゾル全球シミュレーション」
五藤 大輔(国立環境研究所地域環境保全領域 主任研究員)
大気汚染物質のエアロゾルは、PM2.5として大気環境だけではなく、太陽光の散乱・吸収、あるいは雲の核となることで、気候にも影響を与えます。大気環境改善と地球温暖化抑制を同時に実施できるように、大気汚染物質を効果的に減らすことが国内外で議論されています。このような議論の場にも役立つ科学的知見として、「富岳」を使って得られたエアロゾル高解像度シミュレーションやエアロゾルデータ同化に関する最新の成果をご紹介します。
【講演資料】五藤 大輔 

15:45-16:20
前島康光~テーマ横断~「富岳を用いた2021年夏季リアルタイムゲリラ豪雨予測の結果解析」
前島 康光(理化学研究所計算科学研究センター 特別研究員)
理化学研究所では、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、1000通りのアンサンブルを用いて30秒毎に更新する30分先までの降水予測を10通り行うシステムを開発しました。2021年の東京オリンピック・パラリンピック期間に合わせ、首都圏を対象としたリアルタイム予測の実証実験を行いました。本発表では、期間中に発生したゲリラ豪雨事例を対象に、リアルタイムシステムによる予測結果の特徴と、今後の展望について紹介します。
【講演資料】前島 康光 

16:20-16:30
質疑応答